あとりえ60
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利休百首の解説ページ ・・(9)
稽古とは一よりならい十を知り 十よりかへるもとのその一
稽古をするには、一から二、三、四と順を追って十まで進み、その次には再びはじめの一に戻って、又改めて二、三、四、五と順に進むのである。
初めて一を習うときと、十から元の一に戻って、再び一を習うときと、その習う人の心はまったく変わっているものであるたとえば、初めて袱紗捌きを習ったときは、先生から、右の手を何処まで上げよとか、どの指を何本出せとか、いちいち細かいことを教えてもらうが、そんな枝葉のことを覚えることですぎてしまう。そんなことでどんどん進んで十まで稽古を重ねて、再び袱紗捌きの一に戻ると、袱紗捌きの本当の理屈がわかる。
こうしたことを繰り返しているうちに、茶道の真意も、理解できる。
十まで習ったから、これでもうよいと思った人の進歩は、それで止まってしまうのである。
利休百首
井口海仙著 より