あとりえ60

利休百首」は昔 茶道を習っていた関係で非常に関心がありこの本1983年5月に買い、
買ってから20年あまりたっていますが今まできちんと読んでいなかったのでこの場所をかりて
自分も勉強をしようと思いすこしづつ、順番に歌を載せていこうと思います。

利休百首

井口海仙著・・・・ 綾村坦園書___淡交社刊___昭和48年4月27日初版発行

はじめに

「利休百首」とは、千利休が和歌の形を借りて、茶道の精神、点前作法の
心得などを、初心の人にもわかりやすく、記憶しやすいよう、三十一文字に
まとめて、百首集めたものをいうのである。
しかし、全部が利休の作であるとは、断言できない。昔から、紹鴎百首とか、利休
五十首とか、この種の和歌が、多数伝えられている。それらの和歌から「利休百首」
にまとめたのは、裏千家十一代玄々斎宗室であると思う。
裏千家家元の咄々斎と大炉の間との境の襖を「法護普須磨」と称している。
四枚の襖に、玄々斎が点前作法の種別、道具の扱いなどを、自筆の細字で、こまかく
書きつめているが、その終わりの方に 「利休居士教諭百首歌」と題して、この百首を記し、
最後に以心伝心教外別伝不立文字 拍は鳴る敲は響く鉦の躰
と、自作の句を加え「於抛筌斎 不忘宗室」 と署名を加えている。
この百首が書かれた襖は、ちょうど咄々斎の茶道口にあたるので、手前の始まる前や、
拝見物の終るのを待つ間、しぜんとめにつくようになっている。
玄々斎は、門人に、知らず知らずの内に「利休百首」を覚えるようにとの意図から、
そのような位置をえらんだのであろう。
利休百首に解釈を加えた書物は、昭和六年に金沢宗為著「利休百首私解」があり、
私も「茶人のことば」中に利休百首の視界を加えたが、書道家綾村坦園氏と共著で「利休百首」
を出版するにあたり、ほとんど全部を書き直した。
しかしあくまで私解である。こうした歌は、読む人、考える人によって、又別な解釈がつくものである。
決して完全なものでないことをお断りしておく。

昭和四十八年利休忌の日

井口海仙



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かいせつ1〜10 1.その道に入らんと思ふ心こそ 我が身ながらの師匠なりけれ
2.習いつつ見てこそ習え習はずに よしあしいうは愚かなりけり
3.志深き人にはいくたびも あわれみ深くおくぞ教ふる
4.恥をすて人にものとひ習ふべし これぞ上手の基なりける
5.上手にはすきと器用と功積むと この三つそろふ日とぞ能くしる

6.点前には弱みをすててただ強く されど風俗いやしきを去れ
7.点前には強みばかりを思うなよ 強気は弱く軽く重かれ
8.何にても道具扱うたびごとに とるては軽くおくて重かれ
9.何にても置き付けかえる手離れは 恋しき人にわかるると知れ
10.点前こそ薄茶にあれと聞くものを 麁相(そそう)になせしひとはあやまり
かいせつ11〜2011.濃茶には点前をすてて一筋に服の加減と息をもらすな
12.濃茶には湯加減あつく服は尚ほ 泡なきやうにかたまりもなく

13.とにかくに服の加減を覚ゆるは濃茶たびたび点てて能く知れ
14.よそにては茶を汲みて後茶杓にて 茶碗のふちを心して打て
15.中継ぎは胴を横手にかきて取れ 茶杓は直におくものぞかし
16.棗には蓋半月に手をかけて 茶杓を円く置くとこそしれ
17.薄茶入蒔絵彫もの文字あらば 順逆覚え扱ふと知れ
18.肩衝は中次とまた同じこと 底に指をばかけぬとぞ知れ
19.文琳や茄子丸壺大海は 底に指をばかけてこそ持て
20.大海をあしらふ時は大指を 肩にかけるぞ習いなりける
かいせつ21〜3021.口ひろき茶人の茶をば汲むといふ 狭き口をばすくふとぞいふ
22.筒茶碗深き底よりふき上がり 重ねて内へやらぬもの
23.乾きたる茶巾使はば湯はすこしこぼし残してあしらうぞよき
24.炭置くはたとへ習ひにそむくとも 湯のよくたぎる炭は炭なり
25.客になり炭つぐならばそのたびに 薫物などはくべぬことなり
26.炭つがば五徳はさむな十文字 縁をきらすな釣合いをみよ
27.焚え残る白炭あらば捨て置きて また余の炭を置くものぞかし
28.崩れたるその白炭をとりあげて 又たきそへることはなきなり
29.炭おくも習ひばかりにかかはりて 湯のたぎらざる炭は消え炭
30.風炉の炭見ることはなし見ぬとても 見ぬこそ猶も見る心なれ
かいせつ31-4031.客になり風炉の其うち見る時に 炭崩れなん気づかひをせよ
32.客になり底取るならばいつにても 囲炉裡の炭を崩し尽すな
33.墨蹟をかける時にはたくぼくを 末座の方へ大方はひけ
34.絵の物を掛る時にたくぼくを 印ある方へ引きおくもよし
35.絵掛けものひだり右向きむかふむき 使ふも床の勝手にぞよる
36.掛物の釘打つならば大輪より 九分下げて打て釘も九分なり
37.床にまた和歌の類をば掛るなら 外に歌書をば荘(かざ)らぬと知れ
38.外題あるものを余所にて見るときは 先づ外題をば見せて披(ひら)けよ>>>書物を披く
39.品々の釜によりての名は多し 釜の総名鑵子(かんす)とぞいふ
40.冬の釜囲炉裏縁より六七分 高くすえるぞ習ひなりける
かいせつ41〜5041.姥口は囲炉裏縁より六七分 低くすえるぞ習ひなりける
42.置き合わせ心をつけて見るぞかし 袋は縫目畳目に置け
43.はこびだて水指しおくは横畳 二つ割にてまんなかに置け
44.茶入又茶筅のかねをよくも知れ あとに残せる道具目当てに
45.水指に手桶出さば手は横に 前の蓋とりさきに重ねよ
46.釣瓶こそ手は竪に置け蓋取らば 釜に近づく方と知るべし
47.余所などへ花をおくらば其花は 開きすぎはやらぬものなり
48.小板にて濃茶を立てば茶巾をば 小板の端におくものぞかし
49.喚鐘は大と小とに中々(ちゅうちゅう)に 大と五つの数をうつなり
50.茶入れより茶掬ふには心得て 初中後すくへそれが秘事也
かいせつ51-6051.湯を汲むは柄杓に心つきの輪の そこねぬように覚悟して汲む
52.柄杓にて湯を汲む時の習には三つの心得あるものぞかし

53.湯を汲みて茶碗に入るる其時の 柄杓のねぢは肱よりぞする
54.柄杓にて白湯と水とを汲む時は 汲むと思はじ持つと思はじ
55.茶を振るは手先をふると思ふなよ 臂(ひじ)よりふれよそれが秘事なり
56.羽箒は風爐に右羽よ爐の時は 左羽をば使ふとぞしる
57.名物の茶碗出でたる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ
58.暁は数寄屋のうちも行燈に 夜会などには短檠(たんけい)を置け
59.ともしびに陰と陽との二つあり あかつき陰によひは陽なり
60.燈火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ
かいせつ61-7061.いにしへは夜会などには床の内 掛物花は なしとこそきけ
62.炉のうちは炭斗瓢柄の火箸 陶器香合ねり香としれ
63.風炉の時炭は菜籠(さいろ)にかね火箸 ぬり香合に白檀をたけ
64.いにしへは名物などの香合へ 直ちにたきもの入れぬとぞきく
65.蓋置に三つ足あらば一つ足 まへにつかふと心得ておけ
66.二畳台三畳台の水指は まづ九つ目におくが法なり
67.茶巾をば長み布はば一尺に 横は五寸のかね尺としれ
68.帛紗をば竪は九寸よこ巾は八寸八分曲尺にせよ
69.うす板は床かまちより十七目 または十八十九目におけ
70.うす板は床の大小また花や 花生によりかはるしなしな
71-80かいせつ71.花入の折釘うつは地敷居より 三尺三寸五分余もあり
72.花入に大小あらば見合わせよ かねをはずして打つがかねなり
73.竹釘は皮目を上にうつぞかし 皮目を下になすこともあり
74.三つ釘は中の釘より両脇と 二つわりなるまんなかに打て
75.三幅の軸をかけるは中をかけ 軸さきをかけつぎは軸もと
76.掛物をかけて置くには壁付を 三四分すかしおくことときく
77.時ならず客の来らば点前をば 心は草にわざをつつしめ
78.花見よりかへりの人に茶の湯せば 花鳥の絵をも花も置きまじ
79.釣舟はくさりの長さ床により 出船入船浮舟と知れ
80.壺などを床に飾らん心あらば 花より上にかざりおくべし
81-90かいせつ81.風炉濃茶必ず釜に水さすと 一筋に思ふ人はあやまり
82.右の手を扱ふ時はわが心 左の方にあるとしるべし
83.一点前点るうちには善悪と 有無の心のわかちをも知る
84.なまるとは手つづき早く又おそく ところどころのそろはぬをいふ
85.点前には重きを軽く軽きをば 重く扱ふ味ひをしれ
86.盆石をかざりし時の掛物に 山水などはさしあひとしれ
87.板床に葉茶壺茶入品々を かざらでかざる法もありけり
88.床の上に籠花入れを置く時は 薄板などはしかぬものなり
89.掛け物や花を拝見する時は 三尺ほどは座をよけてみよ
90.稽古とは一より習い十を知り 十よりかへるもとのその一
91-10291.茶の湯をば心に染めて眼にかけず 耳をひそめてきくこともなし
92.目にも見よ耳にもふれよ香を嗅ぎて ことを問いつつよく合点せよ
93.習いをばちりあくたぞと思へかし 書物は反古腰張りにせよ
94.茶を点てば茶筅に心よくつけて 茶碗の底へ強くあたるな
95.水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝 柄杓と心あたらしきよし
96.茶はさびて心はあつくもてなせよ 道具はいつも有合にせよ
97.釜一つあれば茶の湯はなるものを 数の道具をもつは愚かな
98.かず多くある道具をも押しかくし 無きがまねする人も愚かな
99.茶の湯には梅寒菊に黄葉み落ち 青竹枯れ木あかつきの霜
100.茶の湯とはただ湯をわかして茶を点てて のむばかりなる事と知るべし
101.もとよりもなきいにしへの法なれど 今ぞ極まる本来の法
102.規矩作法守りつくして破るとも 離るるとても本を忘るな

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